相続が始まると、まず金融機関の口座が動かなくなります。
年金や給与が入っていた通帳も、必要な手続きが整うまで入出金が止まります。
日常の支払いに影響が出やすいからこそ、最初に全体の道筋をつかみ、順序に従って静かに進めることが大切です。
この記事では、手続きの順番とつまずきやすい点、専門家に依頼する意味などを順に整理します。
口座が止まる理由と最初の連絡
名義人の死亡が金融機関に伝わると、不正な引き出しを避けるため入出金が制限されます。
まず取引のある支店や相続専用窓口へ連絡し、必要書類や手続きの案内を受け取ります。
通帳やキャッシュカード、名義人の基本情報、連絡の履歴を手元に揃え、やり取りの記録を丁寧に残すと後の確認が容易になります。
死亡後にカードなどで引き出しを続ける行為は、民事上の清算の対象となるだけでなく、状況によっては違法と評価されるおそれがあり、家族間の疑念を生みやすい行為です。
早めに停止し、正しい手順に戻すことが紛争予防につながります。
提出する書類の全体像
銀行で求められる骨格は共通です。
被相続人の出生から死亡までが連続して確認できる戸籍一式、相続人全員が誰であるかを示す戸籍、各人の本人確認書類と印鑑証明、そして銀行所定の相続手続書類です。
転籍や婚姻の履歴により戸籍は複数通に分かれるのが一般的で、どこか一つでも欠けると確認が止まります。
印影は鮮明に揃え、署名は読みやすい楷書で統一すると差し戻しの確率が下がります。
原本還付や郵送受付の扱いは金融機関によって異なるため、案内に合わせて収集と提出の順番を設計すると無駄が消えます。
算定は、相続開始時の預金残高に3分の1を掛け、さらに各人の法定相続分を掛け合わせた金額を基準とします。
同一の金融機関から引き出せる総額には上限があり、上限は一金融機関につき150万円です。
生活費や葬儀費用の立て替えに道が開く一方、後日の遺産分割で精算されるため、領収書と支払い記録の保存が不可欠です。
遺言がある場合
遺言が有効なときは、その内容に沿って手続きが進みます。
自筆の遺言は、家庭裁判所での検認に関する記録を求められることが多く、法務局の保管制度で保管された自筆証書遺言は検認を要しません。
公正証書遺言の場合は検認不要です。
遺言執行者が定められていれば、その選任を示す書類と印鑑証明を添え、銀行の所定書類に沿って払戻しや名義変更を進めます。
相続人間の合意形成を待たずに動かせる点が強みです。
遺言がない場合
遺言がないときは、相続人全員の合意内容を一枚の遺産分割協議書にまとめます。
預貯金の欄には金融機関名、支店名、口座の種別と番号を特定して記載し、代表して受け取る人を明らかにします。
話し合いが進まない事情があるときは、家庭裁判所の調停を利用して、相続人間の合意を図る方法があります。
調停調書は確定判決と同じ効力を持つため、銀行の審査がスムーズになります。
婚姻や転籍、改製の履歴により複数通に分かれるのが一般的です。
相続人の確定は戸籍で客観的に示されるため、早い段階で漏れをなくすことが要点になります。
手続きの順番
最初に相続人の範囲を戸籍で確定します。
それと並行して、財産の全体像を把握します。
通帳や残高証明、証券会社の残高、貸金庫の有無、不動産の登記事項、未払いの税金や医療費など、手がかりを一つずつ拾い上げます。
次に遺言の有無によって道筋を決め、銀行の相続センターや支店から所定書類を受け取り、記入と添付の突き合わせを行います。
提出は窓口または郵送で進められることが多く、原本返却の方法や提出書類の範囲を事前に確認しておくと迷いが減ります。
受理から振込や名義変更までに要する日数には幅がありますが、記載内容の明確さと証拠資料の整合が整っていれば短縮されます。
つまずきやすい点と回避のコツ
最も多いのは相続人の見落としです。
認知や養子縁組、前婚の子などの有無を正確に拾い上げないと、手続きは立ち止まります。
次に多いのは財産の特定不足です。
例えば預金を長男に承継させるという書き方だけでは手続きが進みません。
口座を特定できる情報まで丁寧に記すと、訂正や作り直しを避けられます。
相続人の中に海外在住者がいる場合は、印鑑証明の代わりとなる署名証明の取得に時間がかかり、書類が揃うまで待つ必要が生じます。
相続税の申告が必要になる世帯では、相続の開始を知った日の翌日から10か月が期限です。
金融機関の手続きと税務の準備は、同時進行にしておくと安全です。
遺産分割が未了でも、計画を先に描けば、必要書類の収集と銀行の審査を並走させることができます。
期限に追われる前に、戸籍、遺産分割協議書、残高証明の3点を進めるのが良いでしょう。
行政書士に依頼する意味
工程全体を一枚の時間表にして同時並行で進められる点が、行政書士に依頼する最大の価値です。
戸籍収集の順番、遺言の有無による分岐、銀行所定書類の取り寄せと記入、相続関係説明図と財産目録の整備、郵送計画と原本返却の段取りなどを初回の打ち合わせで設計します。
照会や追完のやり取りを任せられるため、手続きのスピードと結果の確実性が両立します。
心の負担が重くなりがちな時期だからこそ、専門家に委ねる判断が生活の再始動を支えます。
まとめ
口座の凍結は避けられませんが、順序を整えれば道は開きます。
相続人の確定、財産の把握、提出書類の準備、そして提出と完了。
焦らず淡々と積み上げることが確実な近道です。
不明点や合意形成の不安がある方は、早い段階でご相談ください。
あなたの進み方に合わせて最短のルートを描き、手続きの負担を引き受けます。
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